音楽が聴こえる
『……うっわ、生意気な言い方』

「センセーなんだから、そんなの得意だろ」

『あたしの担当教科は国語だっての、君、知ってる? いつも寝てるから気付いてないかもしれないケド?』

こうやって話していると、教師面してねぇ香田の素の部分がちょいちょい顔を覗かせる。

そのことに何故かワクワクしてる。

何故、何故、何故。

香田と接する度に膨れ上がる疑問が、空気を入れすぎた風船みたいに、突如、頭の中で弾け飛んだ。



……俺多分、コノヒトが好きなんだ。



シンプルな答えが、急にスコンと胸の内側へ入って来た。

「……寝てんのはセンセーの声のせい」

『はあ!?』

「何でもねぇよ。じゃあ……放課後に来てよ、センセー。んで、教えて?」

他の奴らが聞いたら寒くなるくらい甘い声が出して、お願いをした。

『…………アドバイスくらいなら、出来る、かも。だから、君も授業出なさいよ。いーい?』

俺は、ウン、と頷いて通話を終わらせた。


何が解決した訳でもねぇ。
ただ、自分のモヤモヤの正体に気付いただけだ。それでも久々に鳩尾の辺りが晴れた気がする。

やけに冴えた青い空を見上げて、コンクリートに寝転んだ。

今、歌を作ったら良い曲が出来そうだよな、なんて我ながらクサい考えに苦笑した。





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