音楽が聴こえる
16.

side 茉奈

◆◆◆

他のメンバーとは別メニューで練習を考えた結果、放課後に斉賀を音楽室へと呼び出した。

あたしは自分をさらす覚悟だった。
おとといのあたしは、自分の目の前に現れたシュウに驚いて、それだけにいっぱいいっぱいで。彼らに対して罪悪感も持っていた。ちゃんと見る約束をしていたのに。

「こんなとこでナニすんの?」

マジかよ、と斉賀は音楽室のピアノの前に座るあたしを胡散臭げに見やる。

「せっかく音楽室貸して貰えたのに、練習に決まってるじゃない。さぁ、発声練習してみよっか」

「はい?」

首を傾げる斉賀の鳩尾に軽く拳をいれた。

あたしの拳を予期していなかった斉賀はぐっ、と音を漏らす。

「いってーっ‼ センセの暴力ってどうよ」

「教えてっていたの斉賀君でしょ、真面目にやってみて」

ポロン。
アップライトピアノの鍵盤にのせた指先が、ピアノを弾きたくて疼いた。

悟の家に置いているピアノよりもタッチが重く感じる。



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