音楽が聴こえる
ひゅー。
若いわ。情熱なんだよね。

何かに突かれた様な衝動って言うの?

そんなの、感じたのなんていつよってくらい、昔の話し。

それでも、いつの間にか小さくリズムを取っていた、自分の指先を見て苦笑した。



「よう、あんた。高校の先生なんだろ」

ハタチ前後のアーミーパンツを履いた小奇麗な男の子が、私の前に立ちはだかってギロリと睨みを利かせる。


……まぁ、今のあたし。

いかにもな濃紺のスーツを着た、ひっつめ髪の化粧無し眼鏡女なんて場違いだもん。

でもこの格好の方が、ある意味、目立って良いのだ。

少なくとも、見つかりたくない子達にとっては。

言わば、ここに先生いるぜ、の目印みたいなものになる。


「そうよ。君はもしかして高校生? じゃないわよね?」

童顔なのを気にしているらしいバイト君(推定)は言葉をぐっと詰まらせて、あたしに憤怒の表情を見せた。

気遣うように、客席を見る姿は何ともはや可愛らしいのだけれど。
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