音楽が聴こえる

side ジュン

◆◆◆

「その話しマジっすか? 悟さん」

ライヴが終わった後、楽屋に使われている部屋で俺達四人は顔を見合せた。

話しの中心にいる悟さんは、少し長めの前髪をかきあげ、くわえてた煙草に火を付けている。

「今日のライヴ、カメラ回してたの気付いてたろ。それ、送ろーかなって考えてんだ」

「あざーす」

山路の調子の良い挨拶に、斗夢はケツ蹴りを食らわせた。

「バカ者。ありがとうございますくらい、ちゃんと言え」

ここをホームグラウンドにしてデビューしたバンドの中で、一番出世したバンド『infinity』。

悟さんもそのバンドのメンバーだったらしい。でもデビュー直前で、悟さんは方向性の違いを理由に脱退したって言われてる。詳しい真相は藪の中だけど。

「まぁ、受かるか分かんねーけども、やってみな」

「悟さんは、バンド探し頼まれたんですか?」

流石、謙二はいつも冷静だ。

美味しい話しは、疑ってかかるタイプだからな。

俺なんて、こんな話し聞いただけで、ヘラヘラしちまうのに。
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