音楽が聴こえる
「マジやべぇーわ」
斗夢が嬉しそうに呟いた。
「……練習しないとな」
謙二がベースをケースにしまいながら、溜息を漏らす。
「なんでそんなにテンション低いんだよ。謙二よー」
山路が余りにのほほんとしてるから、俺は奴の頭にヘッドロックをかけた。
「ぐぉー、ギブギブッ!!」
「たくさんミスったお前が余裕かましてんじゃねぇ」
「ゴメンってー久々に舞い上がっちまってさーっ痛てーっ」
「まぁまぁ、俺もこいつのこと言えねーし」
斗夢は俺の腕をつついて緩めるように促した。
「明らかに練習不足だよね。今日のが俺らの実力だって思われたら、そんなに喜べないよ」
謙二の嘆きも最もだった。
いつも溜り場にしてた斗夢の家が、新築することになってからのこの三ヶ月間。
思うような練習時間をとれてねーのは本当のところだ。
「どーする? 悟さんはああ言ってたけど、地味先に頼む?」
謙二の言葉に皆が口を閉じる。
地味先と交渉する自信なんて、誰一人持ち合わせちゃいねーし。
「じゃんけんだな」
山路が言い出して、皆、無言で頷く。
ここは睨み合いの真剣勝負だけど、俺の頭に一抹の不安がよぎった。
『最初はグー、じゃんけんポーン』
ああ……やっぱり。
なんで、こういう時の悪い勘だけ当たんだよ。
……俺のパーは皆のハサミに切り刻まれていた。