音楽が聴こえる
「……伝染病みたい」

思わず溢れ出た言葉を聞き付けた高城が、あたしの隣りの机に寄り掛かる。

ベースは首から下げたままだ。

「伝染病か。……厄介ですね」

高城も小さい声であたしに答えた。

「君はこの間のライヴ映像見せて貰った?」

「いいえ。不出来だったのは分かってるから。香田先生は? 感想聞いてなかったですね」

チラリと高城を見上げると、目の端にムッとした顔の斉賀が映った。

「高城君。この間はともかく、今の大体の原因はアレじゃないのかな?」

「……ああ。先生ならどうします?」

あたし?
あたしなら……。

「ケツ蹴りの刑」

ボソリと呟くあたしに、高城は目を見開いた。

そして笑いながら「やってもらえる?」と聞いてきたので「ムリ」と速攻で断ってやった。

「……時間はかまわないけど、あんまり詰め込むみたいに練習しても、無意味では?」

高城に然り気無く提案してみる。疲労ばかり蓄積して、効率的とは思えなかった。
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