音楽が聴こえる
「んじゃ、尚更絡んでんじゃねーよ。人それぞれ立場っつーもんがあることくらい、ハタチ過ぎた大人なら察しろや」

そう言って悟は、悠太の手を振り払った。

掴まれた腕はまだジンジンする。

彼はあたしの方など見ようとせず、すみませんでした、と悟に向かって頭を下げた。

……青年。痛いのはあたしだってーの。

「悠太。お前、罰として皿洗いな。今日はオモテに出てくんな」

少しだけ丸まった背中を二人で見送ると。

「……悪かったな。茉奈(まな)。あいつ、まだ入ったばっかで」

悟は軽く頭を下げた。

「気色悪いなぁ。可愛いじゃん、あの子」

ニッと笑って見せると、悟は面白く無さそうに一声、オバサン、と言って口を曲げた。

「オバサン結構。若いとナメられるんだよね」

「……なぁ、そのいかっちい格好何とかならねぇ?」

耳元で落とされる、悟の溜息がウザい。

「あんまし、近寄んないで。店長さん。あたし、一応まだ仕事中」






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