音楽が聴こえる
関わると、心の振り幅が大きくなる。


焦らなくても大丈夫だよ、って言ってやりたいところだけど。

そんなの無意味だもん。


斉賀の咽の調子が悪いと気付いたのは二日前。

前に聞いた時より、サビの部分の声に伸びが無い？ と思った程度。

風邪でも引いたのか。

じゃあ、ヴォーカルパートは休んで、楽器だけ合わせば良いのに。

だけど馬鹿な斉賀は、そんなことしない。

我武者羅過ぎて潰れるタイプだ、アレは。

授業なんて大して聞いてなくても、点数取れてるから、もっと要領の良い子だと思ってたけど。


自分の荷物が置いてある職員用のロッカー前まで来て、ハタと気付いた。

本、拾わずに来ちゃったし。


……帰ろ。

悟に文句の１つも言いたいところだ。

あたしはバッグを手にして、また歩き出した。

< 40 / 195 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop