音楽が聴こえる
悟の声のトーンが一音、また下がった。

「……お前。シュウが連絡しても出ねえらしいじゃん。まだ拘ってんのかよ」

突然の言葉に、体が固まった。

「……拘ってなんか無い」

「じゃあ、出てやりゃー良いだろうが。……仲間だったんだから」

「……悟はそれで良いの?」

「構わねぇーよ」

あたしだったら、悟が昔の女と連絡を取ってるなんて嫌。だから、遠慮していたつもりだった。


……そうか、あたし達ってそういうんじゃ無いもんね。

初めて悟と寝たのだって。

シュウと別れて……父とも別れた後。


同情が始まりだっだ。

悟が慰めるために伸ばした腕に、しがみついたのはあたしだ。

妹のように可愛いがってくれていた悟との関係を壊したのは、あたしなんだ。

「……分かった。そうして欲しいんなら、そうする」

あんたがそう言うんなら。

悟にとって、今でもシュウは大切な仲間。

バンドを脱退したって、彼が困っていれば手を貸すし、彼が望めば骨を折る。
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