音楽が聴こえる
6.新たな認識

side 茉奈

◇◇◇
身体中がオイルの切れたロボットみたいに、ギシギシ音が出て来そう。

ぎこちない動きでクローゼットからグレーのストライプのパンツスーツを取り出して、着替えた。


……それにしても、悟の奴。
やっぱり、起きなかったじゃない。

あたしは悟のことを思い出して苦笑した。

疲れて疲れて泥のように眠った後、次に目覚めた時には、もう5時になっていて。

ピクリともしない悟の腕を、試しに軽く揺すったけど、低い呻き声しか返って来なかった。

あたしは、今度こそ自分の下着を救出して、家路へと急いだのだった。


7時には家を出たいあたしは、一人分のお湯を沸かしてインスタントコーヒーを入れた。

本当は悟の家のコーヒーが恋しかったけど。

平日のあたしにそんな時間の余裕も、心の余裕も無い。

コーヒーを飲みつつ、鏡の前に立って身だしなみをチェックする。

……よし、本日も地味也。

後は眼鏡を掛けるだけ……。って、あたしの眼鏡、メガネは?

あー。……悟に投げられた。
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