音楽が聴こえる
「眠気防止です」

あたしはコロッケパンを辞めて、ホイップパンを食べ始める。

「ひっでえー 」 と言った割りには、口とは裏腹に珍しく笑顔を向けられ、ドキリとする。

斉賀はどうやら、あたしに対して怒るのを止めたらしい。

昨日、下手くそと罵ったのに。……案外Mな子?

「あんな大きな音で眠れる奴なんて居んのかよ」

耳慣れしてれば、案外寝られるもんよ。


「……なあセンセ……俺の歌、そんなにイケてねえ歌だった?」

殊勝な顔をして尋ねる斉賀は、思いの外、あたしからの評価を気にしてるようだ。

斉賀の繊細な一面を垣間見た気がした。

……意外。
この子、他人の評価なんて我関せずだと思ってた。

「斉賀君は歌ってて、楽しい?」

「えっ?……ああ。……楽しいかな?」

「君が疑問系?」

「いや。楽しい」

素直に言い直した斉賀は、少し顔を赤らめた。

「改まって聞かれっとさぁ」

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