音楽が聴こえる

side ジュン

◆◆◆
……カリスマ性ってよ。簡単に言ってくれんじゃねーの。

言った本人は、フツーの顔して甘ったるそうなパン食ってるし。

「そればっかりは、自分がどうこう出来るもんでもねえだろ?」

香田の奴は、クリームの付いた自分の指をペロッと舐めた。

その仕草に不覚にも、俺の心臓は音を立てる。

今日、こいつの眼鏡外してんのが、生徒の間でちょっとした話題になってんのは、本当。ことに男子の間では。

あれ? あんな顔してたっけって。

年齢不詳に見せてたマジメ臭い眼鏡が無くなって、クリアに見せた目はいつもよりでかい。

眼鏡のフレームで隠れてた睫毛も、恐ろしく長くって。

そのくせ化粧っ気がねえから、化粧で作った女子高生の顔より自然に見える。

やべえ。
一瞬だけ、あいつの赤い舌に見惚れた、俺。

そんな俺を不審に思ったのか、香田の奴はパンを握り締めた。

そんなにヤバイ視線を送ったのかと内心焦ってると香田に「コロッケパンなら良いけどホイップパンはやれない」と凄まれた。
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