音楽が聴こえる
……うっわー。

俺、今、何した。
香田の口に手え伸ばした。

俺、ヤバい奴みたいじゃねえ?


廊下を歩き出すと、見たことあるような無いような女達に声を掛けられた。

『ライヴ楽しかったです』
『今度はいつやるんですか?』
『私も行きたいんですけどー』

その都度、反射的に適当な挨拶を返しても、俺の頭ん中は香田の口元に触れた、その感触だけ。

触れた時の柔らかい唇。あいつは驚いて、でかい目を更に大きく見開いた。

あん時の俺、欲情した?

あれが香田じゃなくて他の女だったら、簡単なのに。

なんて考えてんのがヤバいって。
見境ねえ、飢えたドーテーかよっ。

その上、あいつの目に魅せられて、つい本心が口から出ちまった。

……チャンスを逃したくねーなんて。

俺、めっちゃ格好悪いわ。


俺が頭を掻きながら自分の教室へ入ると。

俺の席の辺りにはいつもの通り、斗夢と山路が座っていて、雑誌を読みながら笑っていた。
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