音楽が聴こえる
あたしが上手い言葉を探して苦笑を浮かべていると早見先生は「ほら、香田先生も三年目になるのに、僕達殆ど一緒になったことも無いでしょう?」と更に深く微笑んだ。

「宜しくお願いします、香田先生」

握手を求められて、手を差し出す。

すると早見先生は勢いよく両手で握り返して来た。

「僕も頑張りますから、あてにしてください」

「……宜しくお願いします」


早見先生の高いテンションについていけん。

あたしは、さり気なく手を引き抜き、小さく一礼してから廊下を歩き出した。



「先生」

廊下のすぐ角を曲がった薄暗がりからするっと人影が出て来て、心臓がギュッとした。

「ビックリしたぁ、高城君。なんでここにいるの」

「……もしかして先生、人気急上昇中です?」

高城が帰り支度のまま、壁に寄り掛かっていた。

「教務室、鍵が掛かっていたんで、こっちかなと思って」

彼は視聴覚室の鍵をあたしに手渡す。

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