音楽が聴こえる
「ああ。会議だったから」

「先生、ちょっとお願いがあるんですけど」

一緒に隣りを歩きだした高城は、少しだけ言いにくそうにしている。

「策士の高城君っぽくないね」

あたしの言葉に高城はクスクスと笑う。

「俺はそんなに、頭が切れる人間じゃありませんよ」

「良く言うわ。君のお蔭で、今年の文化祭は早見先生と体育館責任者」

「ああ、それで」

「それで?」

「あんな目立つところで手を握り合ってたんですか」

「あれは握手。熱烈な握手されたの」

あたしの返事で高城のクスクス笑いは増長された。

「で、君の用件は何よ」

「悟さんからオーディションの日程の連絡が来たんですよ」

「再来週の土曜だっけ」

憎たらしいことに、高城の笑いは止まらない。

「ちゃんと香田先生にも連絡してるんだ」

「そ、れ、で?」

「先生、土曜も練習したいんだけと、可能ですか」

ああ。そうか。
当番でなければ、土曜は休めるからね。
基本、顧問ならば出て来なくちゃいけない。
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