音楽が聴こえる

side ジュン

◆◆◆
「明日マジでかっ?」

謙二が登校してくるなり、俺の机を占拠していた山路が飛び付いた。

山路は5分前、自分のカバンとギターケースを持ったまま、俺の席に突進して来やがった。

山路の興奮度合いに、謙二は少しばかり眉を潜める。……5分前の俺と同じように。

「嘘付いてどうすんの」

「だってよー、普通は無理っしょー。あそこで練習だけなんてよ有り得ないだろー? どんな手使ったんだよ、謙二様ぁ」


ーー キィーンコーンカーンコーン……


それは絶妙のタイミングで、始業のチャイムが鳴り始めた。

「ああ、もうっ!! 話し聞きてーのによー」

「朝からわざわざご苦労、山路」

謙二に手を振られ、奴はバタバタと帰って行った。

山路は隣りのクラスのクセに、 いつも俺らのクラスへやって来ちゃあ、ひと騒ぎして戻って行くのが日課だ。

「何? ジュンも何か言いたい?」

俺と視線が合った謙二の眼鏡の奥は笑ってる。

その表情が、お前も聞きたいんだろ、と言ってる気がしてイラッとした。
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