音楽が聴こえる
体を屈めてコーヒー牛乳を取っている時、梨花が俺目掛けてタックルを決めてきやがった。

「ジューンーヤッ」

「おわっ」

俺の腰の辺りに梨花の腕が巻き付いてくる。

ぎゅっとあからさまなくらい、俺に胸を刷り寄せた。

「久し振りー。全然メールに返事くれないしぃ」

俺が体を伸ばして梨花を見ると、上目使いな視線が媚びを売ってるようで、顔を背けたくなった。

こいつの睫毛、付け睫なんだよな。

今まで気にしなかったことが異様に思えた。

「……ああ、忙しんだ。今」

「知ってるぅ。バンドの練習、学校でしてるって。でも誰も入れてもらえないって不満言ってるよ」

「ジュン、先行くよ」

謙二は笑顔を張り付けて梨花に軽く頭を下げると足早に姿を消した。


……逃げたな。


梨花は奴の苦手なタイプ。

謙二は作り物が嫌いだ。華美な女も。

「……ねーえ、ジュンヤ。ちょっとこっち来て。話しがあるの」

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