音楽が聴こえる
「……ジュンヤ?」

ガキの頃の面影を探すように眺めていた俺をせっつきやがる。

梨花はブラウスの中で重なったままの俺の手をブラジャーへと擦り付けて来た。

俺の手の平は、ブラジャーの上からでも胸の尖った部分を感じとった。

途端、何とも言い難い感情が走った。
ああ、ようやく選別出来た。俺の感情は。

……嫌悪感、だった。


その時、階段の上の方から『バサバサバサッ』と盛大に何かを落とす音が響いた。

「きゃっ」

梨花は可愛らしい声を立てて、俺の体から瞬時に離れた。

「あ……ごめんなさいね」

低く涼やかな声が頭上から聞こえ、思い切り振り返ると。

香田が階段の踊り場で、何か拾い集めていた。


「あーあ……邪魔入っちゃったぁ」

口を尖らせた梨花は「またね」と小さく手を振り、とっとと階段を下って行った。

えらく気まずい俺だけを残して。



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