音楽が聴こえる
ーーー
悟が帰って来た時、あたしは持参した缶ビールを飲みながらレンタルしたDVDを見ていた。

ひとの家で寛ぐのもどうかと思うけど、やっぱりバカでかいテレビの誘惑には勝てなかった。

同じ映画でも、大きい画面は迫力が違うんだよね。

あたしは古いSF映画に、口を開けて見入っていたようで、いつの間にか帰ってた悟に笑われた。

「お前、なんつー顔して見てんだよ。アハハ」

「あ。お帰り」

あたしは映画から目が離せず、声だけ掛ける。

「……反応薄っ」

「うん? 今ねクライマックス」

戦士がヒロイン奪還のため敵と戦うなんて、ベタな話しだけど、ドッチュンドッチュン撃ち合うところは壮観なのよ。


悟は片手にビール、口には煙草をくわえて、あたしが転がっている隣りに胡座をかいた。

「……お前、こんなの見んの?」

シラケ口調の悟は、ビールのタブを押し開けた。
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