音楽が聴こえる
「悟みたいに、大画面でエッチなの見るよりいいじゃん」

あたしは作り付けのテレビ棚を指差した。

あまり埋まっていない棚の中に、色んな歌手やバンドのライヴDVDが無造作に積まれている一画があるのだが。

先程アダルトな映画が二、三本、紛れてるのを発見したあたし。


「……あー、この間悠太がくれた奴か」

悠太って、あのバイト君か。

「げっ。あんな可愛い子でも、そんなもん観るの? そのことのがショック」

「なーに言ってんの、お前。男なんざ、んなのガキの頃から見てるっての」

「え、そうゆーもの?!」

「俺なんか省吾さんに、かなりエグいの見せられたぜ?」

「パパ? 嘘、あたし見たことないし」

「茉奈ちゃんよー、お前に見せる訳ねーだろ。理想のパパになりたかった人が 」

ビールをすすりながら、父を思い出したのか悟は小さく笑んだ。

「……省吾さん急に入院した時さ、お前にそういうの見られたくないって、処分頼まれてよ、大爆笑。気ぃ使うところ、そこかよって」
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