音楽が聴こえる
「……かなりバカ」

そんなの知らなかったさ、知るわけないじゃん。

「カワイイもんだろうが。エロ本隠すとかエロビデオ捨てるとか」

「……じゃあ、あんたも少しは隠しなさいよ。無造作過ぎ」

ジロリと睨むと、彼は更に表情を崩して煙草の煙を吐いた。

「あ。 お前、映画終わるぞ」

慌てて画面に目を戻したけど、既に戦いは終わっていて、ヒーローとヒロインが盛大なキスを延々と交わすシーンに移っている。

「あー。良いとこ見損ねた」

「良いことシてんじゃん」

貪り合うようなキスを繰り広げてる二人を見て、悟はケラケラと笑う。その上、ひとのお尻をクッションに見立てて、足を乗せて来た。

なんてムカつく。
エロい映画の話しを振ったのはあたしだけどさ、絶対映画見てるあたしの邪魔したでしょ、この人は。

「重いっ、無駄にでかい足乗せんな」

あたしは悟の足を振り落とし、脛に軽く蹴りを入れた。

「痛ってえー。お前、ホントに容赦ねぇよなあ」

ジーパンのポケットへ手を当てる仕草を見せた悟目掛けて、映画の前にヤニ臭くて掃除した灰皿を走らせる。

カーリングのストーンみたい、悟の股の辺りに灰皿は収まった。
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