音楽が聴こえる
「毎日聴いてるんだから覚えちゃったの」

言い訳めいて聞こえたのか、悟は口の端を持ち上げた。

「……いいんじゃねぇ。お前、この先ずっと俺の前で歌わねぇつもり?」

あたしは何も答えず目を閉じて、斉賀達に集中した。



暫く聴いてるうちに斉賀が歌うのを止め、演奏が途中で止まってしまった。

ステージからは、休憩の声が聞こえて来た。


「やっぱりバランス悪いんだよね、彼等」

「……お前がきっちり教えてやれば? センセー様」

悟は欠伸を噛み殺して、昔よりも濃くなった色合いの前髪を邪魔そうにかき上げる。

「あたしの担当教科知ってる? 国語なんだけど」

「知るか」

悟はあたしの頭をポンッと叩いて立ち上がった。

「ちょいと事務所。そこいらの適当に飲ましてやれ」

顎で冷蔵庫を示した悟は、ダルそうにのそのそ歩いた。

「面倒見てあげないの?」

悟の背中に問うと首だけこちらを向いて。

「……お前の感覚は俺の感覚」

……意味分からん。

悟は微かに笑って裏口へ消えてった。




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