White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「『主任になってから忙しいかじゃないか?』って言ったら、納得していない感じでさ、あいつ・・・神尾が来てからおかしいって・・・・・・前の病院で一緒やったから何かあったんじゃないかって」
えっ?
私は、心臓を鷲掴みにされたかのように体から血の気が引くのがわかった。
そして、私は動揺しているのを悟られないように「そんなわけないやん」なんて嘘をついてしまった。
そして、その場にいることができずに、片付けをし始めた。
「そんなわけないよな」
少し笑いながら言っているのは聞こえるが、表情を見られないようにキッチンへ逃げていたため、彼の表情も見ることができなかった。
そして、コップを洗う水音と、テレビから流れるバラエティの笑い声だけが部屋に響いていた。
彼の声が聞こえないことが、私を不安にさせていた。
もしかしたら、彼も何かを勘付いているのかもしれない。
そう思うと、話してしまった方がいいのか?という考えも浮かんだが、やはり勇気は出なかった。
片付けが済んで、私がリビングに戻ると、瞬さんはテーブルに突っ伏して眠っていた。
瞬さんの方が疲れてるよね・・・・・・。
彼が眠っている隣に座り、寝顔を見ながら改めて思った。
昨日は、朝から仕事をしてそのまま当直をして、今日の夕方まで普通に勤務しているんやもんね。34時間、拘束されていたんやね・・・・・・。
大学の勤務医の労働時間というのは、問題になっているほどだ。
34時間連続勤務した次の日も、朝から仕事をしている。
いつ疲れをとっているんだろう・・・・・・。
あぁ・・・睫毛長いな・・・。
私は、少し硬めの髪をなでながら、「お疲れ様」と呟いた。
「ん・・・う・・・ん」
あっ、起こしてしまったかな・・・。
少し動いたかと思うと、むくっと顔を上げて「あっ、寝てた?」とまだ眠そうな表情で言った。
「ごめんね。起こしたね」
「いいよ。あっ、もうこんな時間やん、送ろうか?」
掛け時計を見ると、もうすぐ23時になろうとしていた。
私は、時計に向けられていた視線を自分の膝の上で握られている拳へと向けた。