White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「帰りたくない」
ただそう言った。
一瞬、何も聞こえなくなったかのように、静寂に包まれると、彼は「いいの?」と静かに私に問いかけた。
ゆっくりと彼を見上げると、目を丸くして、驚いているようだった。
今まで、私からこんなことを言ったことはなく、自分でも大胆だと思ってしまったが、今日は彼と一緒にいたかった。
「うん」
静かに頷くと、彼は私をそっと抱きしめた。
「今日は・・・・・・我慢できへんよ?」
と耳元で囁く声にゾクッとした。
その後、一緒に入ると離してくれない彼をなんとか引き離し、それぞれお風呂に入った。
私がお風呂から出ると、リビングのテーブルに肘をついてテレビを見ている後姿が目に入った。
彼は、私が出てきたのも気付かず、大きな溜息をついていた。
その姿に、一瞬にして私の胸が痛んだ。
やっぱり迷惑だったのかな?
疲れてるんやもんね・・・わがまま言って悪かったかな。
「瞬さ~ん、どうしたん?溜息なんてついて・・・」
私はリビングのドアを少し開けて声を掛けると、彼は振り返り、「しまった」という苦虫を噛んだような表情をした。
その表情に対して、笑顔で返し、洗面所に向かい髪を乾かし始めた。
髪を乾かし終えると、リビングに戻り、瞬さんの隣に座った。