White Magic ~俺様ドクターの魔法~


「・・・・・・情けないと思ってさ」


溜息混じりに自信なさげに言う彼の横顔をじっと見つめた。


「どうしたん?」



いつもとは違う様子の彼の顔を覗きこんで言った。



彼は、眉間にしわを寄せて、苦しそうに何かを我慢しているようだった。



「俺さ、束村の言ってたことが気になって・・・」


「神尾先生と何かあったんじゃないかってこと?」



私がそう言うと、瞬さんは頷き、再び大きな溜息を一つついた。



「しかも、そんな睦美の異変に気付いているのが、俺じゃなくってさ、束村でさ・・・どっちが恋人かわからん」



頭を抱えるように、そう言うと、大きく息を吐いた。



「神尾と睦美が二人で歩いてるのを見たら、腹立ってさ・・・病院とか忘れて『睦美は俺のだ』って主張したくなる」



目を閉じて、拳を握りしめる彼を見ながら、私は彼に問いかけた。



「それって、ヤキモチ?」



彼は、俯いていた顔を上げ、息を吐きだしたかと思うと、

「そう、俺の独占欲の塊」と呟いた。


そして、「あ――――!!」と言いながら、髪を両手でぐしゃぐしゃにして「なんでやろう」とうなだれた。



「ん?」



彼が何が言いたいのかわからず、私は彼の顔を覗きこんだ。



「俺さ、女はみんな一緒やと思ってた。

少し連絡しないと『浮気してたの?』とか『冷たい』とか言って、『仕事と私どっちが大切?』とか言って、見えない職場の女にまで嫉妬したりしてさ・・・・・・それは、愚かなことだと思ってた。

正直、そんなこと言われるんやったら、彼女なんかいらないって、ここ何年かは思ってた」



私は、何も言わず、彼の横顔をじっと見つめていた。



「でもさ、睦美と付き合って、睦美が他の男と話してるのを見るだけで、腹立ってさ、ずっと愚かだと思ってきた感情を持ってるのがわかって・・・それに、こんなこと思ってるのは、俺だけか?って思ったら・・・情けなくって・・・こんな女々しい男、嫌やんな?」



これまでで一番大きな溜息をつくのをみて、私はいてもたってもいられなくなった。



「情けなくなんてないよ」



私は両手で彼の右手を握り、言った。


「睦美?」



手を握った瞬間、彼の体が強張るのが感じられた。



「私だって、嫉妬するよ?だって、前の彼女の話を聞くだけで、モヤモヤしてくるもん」



彼の目をじっと見つめながら、私は話した。



「どんな人だったんだろうって・・・背は、高かったのかな?

美人だったのかな?どんな会話をしたのかな?

・・・・・・って、考えても仕方ないのに、考えてしまう」



そう、瞬さんに彼女がいたのは、当然のことやけど、それでも嫌なんだ。


その女の人にも笑顔を見せたの?優しい言葉を掛けたの?とか気になってしまう。



「睦美?」


「だから、情けないなんて思わんといて。私は瞬さんが嫉妬してくれて嬉しいよ」


そう・・・『誰にも渡したくない』と思ってくれてるのが嬉しいんやで?



私は、嬉しくて、彼の右腕に腕をからませると、体をピッタリとくっつけると、一瞬体が強張るのがわかった。



「睦美?」



「ありがとう」



私は、彼の耳元で、そっと囁いた。

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