White Magic ~俺様ドクターの魔法~
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「神尾先生、5分後に救急が来ます。自転車走行中に転倒し、―――――――――お願いします」
私は、少しだけの休憩を終えると、すぐに掛ってきた救急要請の電話の内容を神尾先生に伝えた。
「はい、わかったよ」
なぜ、こんな夜中にでも、そんなさわやかな声が出るのだろうと思うくらい爽やかな声で返事をもらい、私は救急室へ急いだ。
患者さんは、飲酒後、自転車に乗って転倒したらしい。
骨折などはしていなかったが、頭を打っていたので、経過入院という形になった。
患者さんを病室へ搬送してもらうと、救急室には私と神尾先生だけになった。
気まずい・・・・・・早くこの場から逃げ出したい。
そう思いながら片付けをしていると、声を掛けられた。
「睦美、木曜日の夜空いてる?」
私は、動けなくなってしまった。どうしたらいい?
浮かんでくるのは、瞬さんの顔。いい加減・・・はきっりさせないといけないよね。
「睦美?この前の・・・・・・」
「大丈夫です。勉強会が終わってからでいいですか?」
彼の言葉を遮るようにして私は彼からの誘いを了承した。
「うん、ありがとう」
ちらっと見た彼の表情は、嬉しそうだった。
その中に、なにか怪しげなものがあるような気がしてゾッとした。
「じゃぁ、先に行くね」
救急室から出て行く彼の背中を見つめて、私は決めた。
最初で最後の私の気持ちを伝えると。