White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「うまい!」
私が作った料理を食べると、いつも言ってくれるわけではない。
『これ、チャレンジしたやろ?』
『毒味?』
と、いまいちの料理には、辛口コメントを言われる。
だからこそ、この人の「うまい」は信用できるんだ。
失敗した料理でも、「また作ってよ」なんて言ってくれるから、なおさら嬉しい。
例え、失敗作でも、残さず食べてくれる。
『無理しなくてもいいのに』
と言っても、『食べられないわけじゃないよ』と笑顔で言ってくれる。
食事が済むと、私は片付け、瞬さんはリビングのソファでテレビを観ていたが、いつもは聞こえる笑い声が聞こえない。
疲れているから眠っているのだと思っていたが、片付けが終わり、彼の元へと向かうと、ソファに深く腰をかけてボーっとしていた。
「瞬さん?」
私は彼の前に手をちらつかせて、こっちに意識を向けるようにした。
「あっ」
戻って来た彼は、驚いた表情をして私を見つめていた。
「どうしたの?」
私は瞬さんの隣に座ると、彼の顔を覗きこみながら聞くと、彼は小さく溜息をつくと、テーブルの上にあったテレビのリモコンを手に取り、テレビを消してしまった。
「睦美・・・・・・」
視線を落として声を出す彼に、ただならぬ空気を感じて私は黙って彼の方を向いた。
大きく開いた脚に上体をあずけるように膝に肘を乗せて溜息をついていた。
そして、目を閉じて、髪をクシャクシャに乱して、「ふう―――」と大きく声を吐いた。
「睦美・・・・・・やっぱり気になるから聞かせて?」
彼の真っ直ぐな視線に飲み込まれそうになりながら、「ん?なに?」と聞いた。
「神尾のこと」
その名前に私の体は一瞬で固まった。
そして、心臓は激しく動き出し、手には汗をかいていた。
「やっぱり、あいつと何かあった?・・・この前聞いて、しつこいかもしれへんけど、やっぱり気になってさ・・・・・・睦美が『何もない』って言ってくれたら、もう2度と聞かへんから」
私の中には、『言うか』『言わないか』かの選択肢が浮かんだ。
私が選んだのは・・・・・・。