White Magic ~俺様ドクターの魔法~
ケーキ入力の時も「あれって食べられるん?」なんて口をモゴモゴさせて聞いてくれる彼には「花より団子」という言葉がぴったりだ。
お互いの顔を見つめ合う様子が本当に幸せそうで、こちらまで幸せな気分になれた。
時折、旦那様が高倉さんの方を向いて「大丈夫?」なんて聞いているのが、最高に優しい顔をしていて、羨ましくなる。
「いいなぁ、めっちゃ幸せそう!」
隣りの奈緒がうらやましそうに二人に視線を向けていた。
「次は、奈緒なんじゃないの?」
なんて意地悪く聞いてみたが、予想外の答えが返って来た。
「何言ってんの!つぎは、ももちゃんやろ?ブーケ受け取ったし!」
「はぁ?そんなん関係ないやん」
私は、彼女の言葉をかわして、二人の方へ視線を向けた。
「そうやって、ももちゃんは、彼氏の話してくれへんのやから」
私は背を向けながら少し動揺してしまった。
そう、私は奈緒や奈々とは仲が良いが、そういった話をしたことはなかった。
申し訳なく思っているが、気軽に紹介できる相手じゃないし、元彼のことだって・・・・・・言えるはずもない。
「そのうち紹介するよ」
少しだけ、奈緒の方に顔を向けて言うと、彼女は目を輝かせて「ほんまに?」と喜んでいた。
・・・・・・そのうちって、言ったからいいかな?
新郎新婦の二人がお色直しに言っている間、新郎側の友人らしき人達が、3人で私達のテーブルにやってきた。
「どうぞ~」
なんて軽い感じで私の前にビールを出す彼は「立川裕介」と名乗った。
丁寧に漢字まで説明してくれた。
真っ黒で少し癖のある髪に垂れ目気味の目は、笑うといっそう細くなっていた。
包み込んでいる雰囲気が柔かい。
「あっ、すみません」
私は、頭を下げてコップを差し出してビールをついでもらった。
「あっ、隣は彼氏?」
束ちゃんの方を向いてそう言う彼は、少し気まずそうだったが、「違います」とキッパリと否定した事に安心したようだった。
「二次会は行くの?」
あくまで軽く聞く彼に「行きます」と私が答えると嬉しそうに笑い「そっか、じゃぁ、また後でね」と言い席に戻った。
「そろそろ、お色直しが終わり、新郎新婦のお二人が戻られるので、御着席ください」
と聞こえたからだ。