White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「ももちゃんは・・・」
奈緒が私のことを「ももちゃん」と呼んだので、隣に座っていた立川さんも同じように呼ぶようになっていた。
本音を言えば、嫌だが、名前で呼ばれるよりましかも・・・。
「あっ、ももちゃん達ここにいたんや!」
高倉さんが私達の所へ来てくれ、少し安心した。
「お前ら、由美の後輩を困らせるなよ」
豊川さんが3人に対して言ってくれた言葉がとても嬉しかった。
別に困らされているわけではないが・・・。
「別に困らせてないし。ねっ、ももちゃん?」
立川さんが、私の顔を覗きこむとニコッと笑ってそう言った。
その笑顔に対して、私はよっぽど困った表情をしていたに違いない。
「ほら、困ってるやん。ごめんね」
そうさりげなく謝ってくれる豊川さんに3人共くぎ付けになっていた。
高倉さんが選んだ人は、やっぱり素敵な人やな・・・。
「あぁやってさ、結局豊川が一番もてるんよな」
「やっぱりもてたんですか?」
おもわず、『やっぱり』と聞いてしまった。
「そう。高校の時からあいつが一番頭が良くて、もてるんよな」
「そうそう、でもさ、告白されても、高倉ちゃん一途やったから、全て断ってたよな」
口々に言うのは、溜息混じりの豊川さんの逸話だった。
2人は、高校の同級生で、高校2年の時に付き合い始めた。
順風満帆に過ごしていて、お互いに就職し、そろそろ結婚かというときに、豊川さんの海外勤務が決まり、4年間も離れていた。
その間も2人の絆は離れることなく、今日に至る。
この話を高倉さんから初めて聞いた時、本当に涙が出てきたのを覚えている。
「ところで、ももちゃんは、彼氏いるの?」
話題を変えたかと思ったら、ついに核心をついてきた。
「はい、います」
はっきりと言うと、立川さんは「そっか、やっぱり?」と溜息混じりに呟いていた。
「俺が入る隙間ない?」
「ありません」
「そんなにきっぱり言わんでも~」
うなだれてしまった立川さんに、目の前のビールを見せて「飲みましょう」とすすめると、「あ――!!飲むぞ!」と声を上げて、飲み始めた。