White Magic ~俺様ドクターの魔法~
私は、彼の目を見て話すことはできず、彼が食べているハンバーグの付け合わせのにんじんを見つめていた。
彼はにんじんが嫌いなのか、全く食べようとしないので、標的は動かずにすんでいた。
彼は、控えめな相槌を打って、話を聞いてくれていた。
「・・・・・・というわけです」
全て話し終えると、彼は「それって・・・・・・」と話し始めた。
「彼は、ももちゃんのことを想いすぎてるんやな」
想いすぎてる?
「彼は、ももちゃんを選ぼうとしてるんじゃないかな?」
「私を選ぶ?」
どういうこと?私はようやく彼の目を見た。
少し垂れた目元は優しく、私を見つめていた。
「そう、彼はアメリカには行かないんじゃないかな?」
・・・・・・そんなことするはずがない。
「それはないです」
「なんで?聞いたの?」
「聞いてない・・・でも・・・彼は、医師です。
患者さんのために知識や技術を身につけて、よりよい医療を提供するために・・・アメリカに・・・・・・」
「ふふふ・・・ももちゃん、そんなこと本気で思ってるの?」
何、この人。
なんで笑ってんの?
「俺は、医者の気持ちは分からんけど、きっと愛している人のためなら、何をも犠牲にできるんじゃないかな?」
・・・・・・犠牲って。
私の頭の中では、彼の言葉がリピートされていた。
どういうこと?私のためにアメリカ行きを諦めるってこと?
「俺ならできるよ。ももちゃんのためならね」
・・・・・・真っ直ぐな目で見られると息が止まってしまいそうだった。
全てを飲み込まれてしまいそう。でも・・・・・・。
「ごめんなさい。自分の夢を諦める人は好きにはなれません」
あぁ、言ってしまった。
今までずっと話を聞いてくれていたのに、酷過ぎるよね・・・。
最低な女よね・・・・・・。
「あ~また振られたし。やっぱり、ももちゃん好きやな」
・・・・・・はぁ?この男、どれだけ打たれ強いねん!
私が驚き、彼の顔を見ていると、ニコッと笑い口を開いた。