White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「ももちゃん?」
あれ?ももちゃんて呼んでる?それに・・・この声・・・聞き覚えある・・・。
「はい・・・」
「俺だよ・・・立川裕介・・・覚えてる?」
心配そうに私を覗きこむ男は「立川裕介」と名乗った。
えっ?
「立川さん?」
あれ?
なんで?
あっ、髪形が違うからわからなかったんだ。
少し癖の強い髪は、水に濡れてストレートになっていた。
それが顔にかかっていて、とてもセクシーだった。
って、私は何を考えてるの!
「そう、あっ髪濡れてるからわからんかった?」
・・・・・・その通りです。
「はい」
「そっかぁ、俺さ、くせ毛でさ、濡れるとストレートになるねん」
笑顔で髪を触りながらそう言う彼に、なぜか安心していた。
そっか、立川さんの部屋か・・・・・・それなら・・・・・・。
「よかったじゃないし」
突然上げてしまった大声に、立川さんは「どうした?」と目を丸くしていた。
そして、私は大声をあげたせいで、激しい頭痛に襲われていた。
「いったぁい」
頭を抱えて動けなかった私に、立川さんは「大丈夫?」と声を掛けてくれたが、その声でさえ、頭に響いていた。
少しおさまってきた頭で、再び思考を巡らせる。
私は、いったいここで・・・・何をしていた?
一晩この部屋で過ごしたんよね?ってことは・・・もしかして?
私は勢いよく自分の姿を確認した。服は着ていた。
しかも自分の服。
とりあえず脱いでなさそうなことに安心した。
いやいや、服は脱いでいなくても・・・・・・。
「・・・・・・ねぇ、何もなかったよね?」
おそるおそる立川さんに聞くと、彼は満面の笑みを零していた。
「覚えてないん?ももちゃんって酔うと、エッチになるんやね~」
とニヤニヤとしながら言った。
あ~終わった。
私は、この人と?
「いや――――!!」
考えたくもない事実に絶叫していた。そして後悔。
「いたたた・・・・・・」
頭がずきずきと痛み、再び頭を抱え込んだ。動けないでいる私の前で、彼は笑っていた。
「笑い事じゃないし!」
私は苦痛に顔をゆがめながら呟くように言った。
「心配しなくても、俺らは何もなかったよ」
その言葉に目を丸くして、彼の顔を見ると、優しい表情をしていた。
「・・・・・・」
「だってさ、ずっと『瞬さ~ん』なんて他の男の名前を呼んでいる女の子をどうにもできへんでしょ?」
一瞬にして顔が赤くなってくるのがわかった。
立川さんは、瞬さんの名前を知らないから、きっと本当に私が口走ったんや・・・・・・恥ずかしすぎる。
あぁ、消えてしまいたい。
「・・・・・・・」
私がうなだれていると、立川さんは、「飯食おう」と明るく言うと、私の腕を掴んでベッドから下ろした。