White Magic ~俺様ドクターの魔法~
Magic21 突撃
「おはよう」
いつもの月曜日。肌寒いくらいの風が心まで吹いてきそうだった。
「ももちゃん、なんか元気ないね?風邪ひいたの?」
中川副師長が優しく掛けてくれる声に「そうなんです風邪気味で」と笑顔で答えたつもりだが、引きつっているのが自分でもわかった。
私はかばんの中をあさり、あるものを探した。
別れを告げた日から全く手に取っていないスマホ。
彼から連絡が入っていないのを見るのが怖かった。
スマホは、どれだけ探しても見つからなかった。
あっ・・・・・・この前のかばんに入れたままなのかな?
あの時は、別れを受け入れられたことに対して、逃げたかったのだ。
自分で言ったくせに全く覚悟ができていない。
彼が私の前から去っていくのを認めたくなかった。
1日中「元気ないね」と言われ続けて、この日の仕事は終了した。
自分でも仕事でミスをしなかったことに安心していた。
心は傷ついていても、体は自然と動き、頭も仕事モードになれば、それなりに集中できた。
そして、私はいつも通り、病院を出た時、目の前にいた人物に驚いた。
「立川さん・・・・・・」
なんでこの人が私の前に・・・・・・。
彼は私の声に気づくと、右手を少し挙げて「お疲れ」と笑顔で言った。
「ももちゃん、これ、昨日俺の部屋に忘れてたよ」
そう言って差し出されたのは、私のスマホだった。
あぁ、立川さんのところに忘れてたんや。
「ありがとうございます」
頭を下げると、彼は食事でもどう?」と誘われたが、後ろから来た人物に遮られた。
「もも、飯食いに行くぞ!」
それは私が1日避けてきた束ちゃんだった。
「立川さん、今日ももは俺と飯食いに行くから無理です。すみません」
と睨みつけるように言うと、私の腕を引っ張っていった。
「ちょっと!」
まだ病院からそう離れていないのに、この状況はやばい。
見られたら、勘違いされるのは確実だ。
「束ちゃん、離してよ!」
思い切り彼の腕を振り払うと、彼の顔を睨んだ。
「あいつの部屋に行ったん?」
なんで束ちゃんにそんなことを聞かれなくちゃいけないのよ。
「行ったけど、それが?」
開き直っていう私に彼は、眉間に皺を寄せて、悲しそうな表情をした。
「・・・・・・佐々木先生が捜してた」
その言葉に一瞬にして胸が熱くなるのがわかった。
捜してくれてたの?
本当に?