White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「上野山さん」
肩を叩くと、彼はビクッとし、バランスを崩し、イスから転げ落ちた。
「いたたた・・・・・・」
痛みに顔を歪める彼に私は笑ってしまった。
「ももちゃん・・・・・・どうしたの?」
私が黙っていると、彼は立ち上がり、口を開いた。
「ももちゃん、結婚おめでとう」
いつもニヤニヤしている彼の表情おは暗く、影を落とした。
「おめでとうなんて・・・・・・思ってないくせに」
自分でも信じることのできないくらい冷静な声で言っていた。
「えっ・・・・・・」
驚く上野山さんを追い込むようにして、私は捲し立てた。
「私、知ってるんです。上野山さんの気持ち。だから・・・・・・今、気持ちを伝えてください」
「えっ??」
突然の要求に彼は、目を丸くしていた。
「だから早く!」
誰もいない今のうちに早く!
私は睨むに近い表情で彼を見た。
背筋を伸ばした彼は、私と同じくらいの身長である。
その目は、驚きから真剣なものに変わっていた。
「ももちゃん、俺・・・・・・ももちゃんのことが好きです。瞬じゃなく、俺と結婚してください」
やっと言ってくれた。
「ごめんなさい」
「えっ?」
私が下げた頭の上から素っ頓狂な声がした。
「だから・・・・・・ごめんなさい」
もう一度頭を下げたところで、後ろに気配を感じた。
「上野山、すまんな」
私を後ろから抱きしめると、彼は上野山さんに言った。
「ほんま、瞬は最悪やし。俺の方がももちゃんに先に出会ってるのに。
後から来てさっさとさらって行くんやもんね」
悔しそうだが、どこかすっきりした表情で瞬さんに言っていた。
しかし、その後瞬さんは、信じられいことを言った。
「俺は、お前が出会うよりずっと前に睦美に出会ってるの」
えっ・・・・・・?
「瞬どういいうこと?」
「さぁね、それはあ睦美にもまだ話していないから、言えない」
そう言うと、私の腕を掴み、引きずるように連れて行かれた。
「じゃぁ、もう諦めろよ」とだけ残して。
ねぇ、さっきのは何?ずっと前に出会っていたってのは?
「お疲れ様です」
笑顔で通り過ぎる人たちを彼は笑顔でかわしながら病院を出た。
外はようやく秋の気配が感じられるような風が吹いていた。
しかし、彼に掴まれている右腕は、熱を持っていた。