White Magic ~俺様ドクターの魔法~
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「お前さ、なんて残酷なことするねん!」
運転席から聞こえてくる言葉に私は、「何のこと?」と返すと、暗闇でもわかるくらい呆れた顔をされた。
「上野山にあんなこと言わせたら、麻酔なしで縫うみたいなもんやろ」
「はぁ?それを言うなら、傷口に塩じゃないの?」
「だから、パックリ開いた傷口だけでも痛いのに、さらに麻酔なしじゃ痛やろ?
あいつは俺が睦美にプロポーズしたのを見て傷ついた。
それやのに、追い討ちをかけるように告白しろって言われて・・・振られるんやで?ありえへん。俺なら立ち直られへん」
「私も・・・ひどいことをしてしまったって・・・今になったら思うよ」
「まぁ、あいつにはそれくらいしないと、あかんかったやろうからな」
少しだけ私の方に顔を向けると、「あいつの扱い方よくわかってるやん」と頭を撫でられた。
瞬さんは上野山さんから、ずっと私のことを聞かされていたらしい。
「あの病院で睦美に会ってすぐ、上野山の好きな女ってわかった」
あいつわかりやすいから・・・と続けた。
「でもさ、それと同時に俺が捜していた女だってこともわかった」
彼が何を言っているのかがさっぱりわからなかった。
私を捜していた?どういうこと?
「着いたぞ」
彼の声に私は窓の外を見ると、そこ雄哉弥さんのお店だった。
「続きは中で・・・」
にっこり笑う彼の後に続き、私は店内へと入った。
いつもあかるく迎えてくれる店員さんに案内されて席は、いつもとは違い個室だった。注文を済ませると、彼は話し始めた。
「俺は睦美に6年前に会ってるんや」
「6年前?」
「そう、6年前の夏・・・初めて出会った」
6年前って言ったら、私は大学生。
東京にいたはず・・・いや、夏休みでこっちに帰ってきてたはず・・・。
あっ・・・・・・。
「地震・・・?」
そう6年前の夏、このあたりが震源の地震が起きた。
私はあの時、ちょうど東京から帰ってきて、母方の実家へ帰省していた。
そう大きな地震ではなかったのだが、前日からの雨の影響で地が緩んでいたところに地震が起き、土砂崩れが起きた。
家が崩れ、下敷きになった人もいて、母の実家の周辺では大惨事となっていた。
「そう、あの時、睦美もうちの病院に来たやろ?」
その通りだ。
私は棚の上に置いていた置物が落ちてきて、腕に怪我を負っていた。
置物が尖ったものであったので、傷口も深く出血量も多かったので、救急車で搬送された。
「うん、行った・・・・・・」
私が答えると、彼はゆっくりと話始めた。
「あの時さ、いろんな地域から患者一気に来た。
被害が大きかったのは山間部で、高齢者が多かった。
だからその分、重症の人が多くなっていて・・・・。
正直人手が足りなくて、困っていた。
その中で・・・・・・手が回らない患者さんに声を掛けてくれたり、話を聴いたりりしてくれていいた子がいた。
それって・・・・・・?
彼が私の目を見ながら話す姿に吸い込まれていた。
そして、私は彼が話す過去に引き戻されていた。