White Magic ~俺様ドクターの魔法~
Magic5 お誘い
「ももちゃん、今日空いてる?飲み会するんやけど」
ある日の昼休憩に私は隣に座っている奈緒が声を掛けてきた。
「えっ、あっ、ごめん。今日は用事があって・・・」
いつも『飲み会』といったら必ずといって参加しているというくらい優秀な出席率を誇っていたが、今日はどうしても参加できなかった。
「へ~、ももちゃんが不参加なんて珍しい。彼氏でもできたん?」
か、彼氏?それはない。
「ちがうよ~彼氏なんていないし。今日は用事があってね」
「そっかぁ。じゃぁ、また今度ね」
少し疑いの目を浮かべながらも、奈緒は席を立ち、食堂を後にした。
【今日、何か予定ある?】
昼休憩に入る前にスマホを見ると、佐々木先生からメールが来ていた。
連絡先を交換してから2週間、年末年始で休診になったこともあり会うこともなかったし、連絡が来ることもなかったので、これが初メールだった。
誘っておきながら、連絡もなかたので、やはりからかわれたのだと思い、少し腹立たしく思っていたところへのメールだったので、驚いた。
・・・別に行きたかったわけじゃない。そうそう別に。
誰に言うのでもなく自分で自分に弁解していた。
私は食事を終えると、メール作成画面を開き、メールを打ち始めた。
宛先は、佐々木先生(俺様ドクター)。
【百井です。お疲れ様です。
今日は、特に予定はありません。】
他に何か付けるべきかを考えたが、このまま送信した。すると、すぐに返信が来た。
――佐々木先生(俺様ドクター)――
早っ!!
休憩中?
それにしても30秒くらいしか経ってないんじゃない?
【この前、約束した飯食いに行ける?仕事何時に終わる?】
・・・・・・もう行くこと前提やし。
まぁ、行くつもりで奈緒の誘いを断ったんやけど。
【19時には終わると思います。】
【じゃあ、迎えに行くから、病院裏で待ってて。】
【わかりました。】
この短いメールをしている間、なぜか私は笑いをこらえるのに必死だった。
「ももちゃん、どうしたの?鼻歌なんて歌ってご機嫌やね」
奈緒に、後ろから掛けられた声に自分自身が驚いた。
私、鼻歌なんて歌ってた?
完全に無意識だった。
何がそんなに楽しいのか分からない。
佐々木生からメールが来たから?
いやいや違うし!
私は頭を振って、全否定した。
そうそう、305号室の滝村さんが退院したからだ。
こじつけの理由をつけて、処理しきれない自分の感情を隠そうとした。