White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「お疲れ様でした」
今日は、いつもより早く仕事が終わり、時計を見るとまだ18時半だった。
飲み会に行くメンバーはさっさと着替えて帰って行った。
私はできるだけ誰にも見つからずに病院を出たかったので、ゆっくりと着替えた。
あっ・・・この服。
ジーンズにスニーカー・・・ものすごくカジュアルな服装だし・・・。
佐々木先生が行くようなお店って、こんな格好じゃいけないような所じゃないのかな?どうしよう。
今から服を着替えに帰ったら絶対に間に合わない。
いろいろと考えてみたが、結局はこのまま行くことにした。
私は、覚悟を決めて、病院を出た。
「寒っ・・・」
三が日が過ぎてすぐの夜は、やはり寒くて、コートを着ていても凍えそうだった。
病院裏に回ると、一台の車が止まっていた。
その車を通り過ぎて、私は少し離れた所まで歩いて行った。
「早く終わったから、まだ着いていないみたいやなぁ」
寒さに身を強張らせながらキョロキョロと辺りを見渡していると、スマホが鳴った。
「あっ、佐々木先生からだ。・・・はい、百井で・・・」
「お前、なんで通り過ぎてるねん!!」
私の返事に食い気味に発した佐々木先生の声が、頭の奥まで響き渡った。
はぁ?なんで怒ってるんよ!あれ?通り過ぎる?
私は、さっき通り過ぎた車を改めて見た。
何色かははっきりとはわからないが、おそらく黒か青っぽい色。
車に興味がない私でもなんとなくわかる改造してそうな、所謂『走り屋』といった言葉がぴったりな車。
もしかして、この車が・・・佐々木先生の車?
私は、恐るおそる近づいて、運転席を覗きこむと、目の前の窓がゆっくりと下がり、見慣れた顔が出てきた。しかも・・・・・不機嫌そう。
「・・・・・・」
「早く乗れ!」
「は、はい!」
私は慌てて、助手席の方に回り、走り屋風の車に乗り込んだ。
「行くぞ」
「はい」
シートベルトを締めて、胸元に鞄をしっかりと抱いて、スピードに耐えようとしていた。
しかし、私の心構えとは裏腹に、ごくごく普通のスピードしか出さなかった。
当たり前か・・・・・・。