White Magic ~俺様ドクターの魔法~
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「お茶入れるね~」
と三度、場違いな明るい声を出す母を横目に私達はソファに座った。
「遅くまで、お嬢さんを連れまわして申し訳ありません」
佐々木先生は、再び父に頭を下げた。
「連絡を入れるが筋だろ!」
やっぱり、今日の父はいつもと違う。
「申し訳ありません。僕も彼女にそのようにすすめるべきだったのですが、睦美さんとすごく時間があまりにも楽しくて、つい忘れてしまい、このような時間になってしまいました」
そして、この俺様ドクターもいつもと違う。
こんなに頭を下げている姿を見たことはない。
いや、初めてだ。
「・・・・・・二人は、付き合っているのか?」
鋭い目つきで聞く父の表情が少し寂しそうに感じたのは気のせいだろうか……。
「いえ・・・」
そう、私達は付き合ってはいない。
「もしかして、付き合う気がないのに、こんな時間まで?」
腕を組み、さらに不機嫌な父は瞬さんに言い寄った。
「いえ、そのようなことはありません。僕は真剣に睦美さんと結婚を前提にお付き合いさせていただきたいと思っています」
うわぁ・・・今何でそんなことを言うんよ!火に油を注ぐようなもんやん!!
「け、結婚?」
ほら、眉間に皺を寄せて、さらにイライラしているし!
「はい」
「あら、お父さん、いいじゃない!!」
あ――っ!!もうお母さんは出てくるな!!
「君はいくつだね」
母の言葉を無視して父は低い声で瞬さんに質問し始めた。
「32です」
「睦美より6歳上か。君は、結婚と軽く口にしたが、結婚と一言に言っても、実際は大変なんやぞ?君は・・・その・・・睦美を養えるくらいの給料はあるのか?」
・・・初対面の人にそんなこと聞くか?
きっと、お父さんより高収入だよ・・・・・・。
「まさか、睦美の給料をあてにしてるとかはないだろうな。
この子は看護師をしているから、周りの同じくらいの歳の子よりも給料はもらっているだろう。
下手したら、そのあたりの男よりももらってるかもしれない」
なんで、こんなことを聞くんやろう・・・・・・。
娘が苦労する姿は見たくはないだろうけど・・・・・・。
あっ、あの車を見たから?チャラチャラしているように見えた?
それにこうやって私服だと絶対に医者には見えない・・・・・・。
「お父さん、失礼やで」
父を鎮めようと言ったつもりだったが、今の父には私の言葉など入らなかった。