White Magic ~俺様ドクターの魔法~
「私のこと捜していたんですか?」
なんとなく聞いておきたかった。
そして、「捜してたよ」と言って欲しいと思っていた。
「あぁ、捜していたよ。ナースステーションに行ってもいないし、回診中もすれ違わないし、ちょっとへこんだ」
へこんだって?
会えなかったから?
「俺だけがこんなにも求めてるのかな?って考えたら、かなりへこんできた。
それでこんなにもしんどくなってきたんやで」
「はいはい、冗談を言うくらいの余裕があれば大丈夫ですね。何かあったら、呼んでくださいね」
私を必要としてくれている。ということを知ることができて嬉しかったが、まだ、私の答えは見つからなかった。
「もう行くの?」
そんな捨て犬みたいに寂しそうな顔をしないでよ。
「はい、仕事ですから」
先生の白衣をたたみながら言うと、微かな笑顔で答えてくれた。
「そっか、がんばれ」
「はい」
頭を下げて、その場を後にして、ナースステーションに向かった。
運よく大して仕事もなかったようで、みんな落ち着いていた。
「ももちゃん、どこに行ってたん?」
何かの記録をしていた手を止めて、首を傾げて奈緒が聞いてきた。
「ちょっと、風邪気味で、お薬をもらって来たの」
―――嘘をついた。
「佐々木先生が風邪ひいてるから、点滴をしてあげてた」なんて口が裂けても言えない。
例え、友達でも。
「そっかぁ、気をつけてね」
軽い調子で言う彼女を横目に私はパソコンの前に座り、データをまとめていた。
それにしても大丈夫かな?お昼も食べたのかな?
「大丈夫?」
デスクトップを見ながら手を止まっている私を見て、奈緒は心配してくれ声を掛けてくれた。
「あっ、大丈夫」
仕事中にボーっとしたらあかんやん。
その後も仕事には集中しているつもりだったが、先生の体調が気になって仕方がなかった。
・・・・・・もう点滴が終わる頃やのにな。
1時間近く経っているのに、まだ連絡がないのが気になっていた。
まさか、自分で抜針して帰ったとか?
私は気になり、落ち着いているナースステーションを奈緒達に任せて一階に向かった。