White Magic ~俺様ドクターの魔法~
佐々木先生は、毎週水曜日の非常勤で、午前中は外来診察で、午後からは回診をすることになっていて、今後は土日などにも当直に入ってもらうらしい。
大学病院では、消化器外科医は胃カメラや大腸カメラなどの検査はしないだろうが、この病院では、消化器内科の医師はいないので、消化器外科医が担当している。
彼が来るたびに悪い言葉で表現されていたが、私は直接関わったことがなかったので実態はよくわからなかった。
とりあえず、みんな「厳しすぎる」と声を合わせるように言う。
回診についたり、胃カメラや大腸カメラの補助に付いたりして、質問された内容に答えることができないと、不機嫌になり、「そんなこともわからないのか?」と言われるらしい。
しかも、冷たい目で・・・・・・。
そんなことの繰り返しで、最近では初めからイライラしているように見えるらしい。
佐々木先生が来るようになって1カ月経って付けられたあだ名は『俺様ドクター』。
初めて見た時は、『イケメンドクター』とはやし立てていたのに、散々である。
あぁ、そんな人に関わりたくない。
そんな私の願いもむなしく、今日の当直医師は、佐々木先生だった。
今日の夜勤のメンバーは、私と束ちゃんと1年目の愛ちゃんである。
この3人は佐々木先生の免疫がまだないので、かなり緊張していた。
「あぁ・・・今日は俺様ドクターかよ。俺、関わりたくねえよ」
夜勤前に食堂で早い目の夕飯を食べながら、束ちゃんは頭を抱えていた。
「百井さん・・・・・・私、怖いです」
愛ちゃんの大きな目はすでに涙目になっている。
大学病院では、ドクターや先輩看護師からイヤミを山ほど受けてきたが、こっちに来てからは周りの優しさに馴れてしまっていたので、少し怖かった。
「まあ、愛ちゃんみたいな、若くてかわいい子だったら、大丈夫じゃない?あの先生だって男なんやからさ」
「そうやんな、愛ちゃんなら大丈夫!」
私の根拠のない言葉に乗ってきた束ちゃんは、なぜかテンションが高くなっていた。
でも、本当にそうかもしれない。
今まで、佐々木先生に付いているのは、30代前後の看護師だから、22歳の可愛らしい愛ちゃんになら、あの冷たい目も細くなるはず。
男なんてそんなものだ。