甘いヒミツは恋の罠
「皆本さんは、デザインソフトを使ってパソコンでデザインしないんですか?」


「え? あ、はい……アナログ人間なもので……どうしてもパソコンでデザインするのって昔から苦手なんです」


 今のデザインの時代はデザインソフトを使って立体作成や画像作成をする。正確な寸法が作成できたり、そのままデータを業者に送ったりできるので、利便性は十分理解しているつもりだったが、紅美は自分のこだわりで今でも鉛筆を使い続けていた。


「今どき鉛筆なんて、時代遅れなんですよ」


 結衣との会話をなにげに聞いていた沢田にサラリと嫌味を言われると、紅美はズシッと重い岩がのしかかってきたような気分になった。


「皆本さん、もしよかったらうちの会社仕様にプログラムされたソフトがあるので、使ってみてください」


「そういうのがあったんですか……」


「えぇ、本店の社員しか使ってないと思いますけど、過去のアクセサリーデザインなんか検索するのに使い勝手がよかったりするから、いちいち資料室に行かなくていいし、楽ですよ」


(そ、そんな便利なものがあったなんて……)


 そのソフトは会社の守秘義務などの関係上、朝比奈が管理しているらしく、結衣の勧めで紅美も試しにそのソフトを使ってデザインを描くことにした。
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