甘いヒミツは恋の罠
 そんな言葉に揺さぶられてしまう自分が嫌だ。紅美は何度も朝比奈を突っぱねようとするが、朝比奈との口づけはそんな抵抗をも許さなかった。


「朝比奈さ……どうして、こんなこと……」


 腰に腕を回されて強く抱き寄せられるとビリっと電流が走ったように痺れる。そして、そのあとにくるぞくぞくした感覚が紅美を脱力させた。


「ただ単に俺がお前を気に入ったから……それ以外に理由はない」


「だって、だって……朝比奈さんには他にも女の人がいるじゃないですか」


「なんだ……妬いてるのか、お前も他の女と同じことを言うんだな」


「っ――!」


 そう言われた瞬間、紅美の周りに取り巻いていた甘い誘惑の鎖が理性によって砕けた。


「やめて!」


(何してるの私……最低)


 渾身の力を振り絞って朝比奈を突き飛ばすと、朝比奈は睨む紅美にクスッと笑った。


「お前は必ず俺を好きになる」


「はぁぁ!? な、何言ってるんですか!? うぬぼれも大概にしてください!! こういうことって、その……本当に愛してる人とするものなんじゃないんですか」


「本当に愛してる人……?」


 まるで小馬鹿にしたように朝比奈が鼻で嗤った。
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