甘いヒミツは恋の罠
「あ、あの! 私! 朝比奈社長に一度お礼が言いたかったんです」


「お礼?」


 なんのことだと朝比奈社長が首をかしげている。


「学生の時、就職セミナーで社長にお会いしたの、もちろん覚えてないかとは思うんですけど……あの時の言葉がすごく印象的で、ここまで頑張ってこれたんだと思います」


「就職セミナー……ごめん、そういうセミナーって両手に余るくらいの回数やってるから、君のことは記憶にないんだ。名前は?」


「皆本紅美です」


 憧れだった人に自分の名前を聞かれたことが嬉しくて、紅美はドキドキと波打つ心臓を何度も落ち着かせた。


「皆本さんね、覚えておくよ。名刺を渡しておくからよかったら取っておいてくれ」


「あ、ありがとうございます!」


(朝比奈社長直々に名刺を頂戴するなんて……!)


 嬉しさのあまりに名刺を受け取った手が震える。


 そして紅美が喜々としていると――。
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