甘いヒミツは恋の罠
 ――お前のやろうとしていることは、絵里と同じだぞ


「っ……」


 兄の朝比奈翔の言葉が一瞬、脳裏を過ぎった。そして、朝比奈が伸ばしかけたその手を引っ込めたと同時に紅美がうっすらと目を開いた。


「あさ……ひなさん? 朝比奈さん!?」


 どっと押し寄せる安堵に紅美は顔を綻ばせて、支える朝比奈の腕にしがみついた。


「よかった! このまま放っておかれたらどうしようって……本当に朝比奈さんですよね?」


「あ、あぁ……」


 何かに取り憑かれたように無意識だった。紅美のネックレスに手を伸ばして、それから自分は一体何をしようとしていたのだろうかと思うと、朝比奈は自分に向けられる紅美の笑顔を直視することはできなかった。


「朝比奈さん? どうしたんですか……?」


「……今の俺に、お前の涙を拭うことはできない」


「え……?」
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