甘いヒミツは恋の罠
 朝比奈が紅美から身を離す。すると、長机の上にいくつも広がったファイルの中に、前園絵里の名前が目に留まって凍りついた。


「……お前、ここで何をしていた?」


「ミーティングの資料を探しにここに来たんですけど、鍵をかけられてしまって……あ、あの……勝手に昔のファイルを出し散らかしてすみません。今、片付けますから」


 紅美は、慌てて立ち上がり散らかったファイルを整えようとした。すると、朝比奈が気まずそうに重く口を開いた。


「その、鍵を掛けたやつ……実は――」


「いいんです。私……知らなかったことにしますから。というか、私自身そうしたいんです。妬まれたって、嫌がらせされたって……頑張っていれば結果は自ずとついてくるものですから」


「お前……」



 ――皆本さんが悪いんですよ……。
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