甘いヒミツは恋の罠
「そんなお前の泣き落しで、俺がはいそうですかって首を縦に振ると思うか? お前、人のことにかまけてないで自分の心配したらどうだ?」


「そんな……」


「それから、もう毎日店長室に来る必要もない。それとも、別口で俺と楽しみたいか?」


「っ……――」


 朝比奈が紅美の耳元で甘く囁くように言うと、ゾクリと背筋が震えた。


「ば、馬鹿にしないでください」


 クスクスと笑って紅美の頭をひとなですると、朝比奈は背を向けた――。


(私、どうしてこんな気持ちになるのかわからないよ……)


 いつの間にか冷たくなってしまった指先に触れると、先ほど夢現の中で感じた朝比奈のぬくもりが恋しく感じられた――。
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