甘いヒミツは恋の罠
(私が気にしてても仕方ないか……)


 紅美は頭を切り替えて仕事に取り掛かろうとパソコンの電源を入れた。


「あぁ、そういえば皆本さん、朝比奈店長からデザインのソフト借りてましたよね? あれ、ちゃんと店長に返しておいてくださいよ」


「あ、はい」


(そういえばそうだった……)


 沢田に言われ、デスクの引き出しにしまっておいたソフトを確認する。これを返しに行くということは、また店長室に行かなければならないということだ。


(うぅ……気が重い)


 もう店長室には来なくてもいいと言われ、その時はショックでなにも言葉にできなかった。けれど、今考えると自分勝手もいいところだとふつふつとした怒りがこみ上げてきた。


(仕事に集中しよう!)


 湧いて出てくる雑念を振り切って、紅美は山積みになった仕事に身を投じた。
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