甘いヒミツは恋の罠
「あぁ、なんだお前か」


 女性に続いて部屋から朝比奈が姿を見せる。


「今の、北野さんですよね? 一体何が……」


「もう会社にいる資格が無いとかなんとか言って、これを渡してきた」


 朝比奈に見せられた封筒に紅美は目を瞠った。そこには、達筆な字で“辞表届”と書かれていた。


「これは……」


 紅美はそれを目にすると、弾かれるように身を翻した。


「おい! 待て!」


 紅美は、先ほどの女性がやはり北野結衣だったことを確信すると、朝比奈の呼び止める声も無視して結衣の後を追った。
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