甘いヒミツは恋の罠
「うるさい、あれは……たまたま通りがかっただけだ」


「ふふ……そういうことにしておきます」


「随分と生意気なこと言うな……」


 お互いに引き合い、お互いのぬくもりを確かめ合うように抱きしめ合う。紅美は口づけを乞うように目を閉じたが、戸惑うような朝比奈の熱い吐息だけが頬を何度も掠めただけだった。


(どうしよう……私、朝比奈さんが……好き)


 朝比奈の胸に頬を摺り寄せると腕に力がこめられる。


 人に抱きしめられることが、こんなにも心地よくて温かいものだと紅美は初めて知った。そして、ずっとずっとそのぬくもりに浸っていたいと感じた。


 例えそれが束の間のぬくもりだったとしても――。
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