甘いヒミツは恋の罠
「……可愛いやつ。俺は一度決めたことは必ず成功させる男だ。心配すんな」


 そう言うと、朝比奈は軽く紅美の額に口づけた。


 その柔らかな唇に頬を染めながら朝比奈を見上げると、朝比奈の視線は紅美の胸元に向けられていた。


「朝比奈さん……?」


 その視線はどことなく寂しげで、ルビーの存在を惜しんでいるようにも見えた。


「い、いや……なんでもない。準備が出来次第ここを出る」


 紅美の訝しげな視線に朝比奈は我に返ると、そのままくるりと背を向けた。


(朝比奈さん……やっぱりルビーのこと――)


 朝比奈の何か言いたげな視線を思い出す度に、紅美は複雑な気持ちを隠せずにはいられなかった。
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