甘いヒミツは恋の罠
※ ※ ※

 都心のとあるバーにて――。


「あなたから誘ってきてくれるなんて、珍しいこともあるものねぇ」


 宇都宮葵は、ふふっと笑って煙草に火を点けた。


「後にも先にもこれが最後かもしれないけどな」


「なによもう、つれないのね」


 ふぅっと細く吐いた紫煙に、朝比奈は顔をしかめながらジントニックの入ったグラスを煽いだ。


 朝比奈は、大野からルビーの話を聞いたあと、何度も葵に連絡を取った。しかし、葵はあいにく長期の出張中で、やきもきしながらもようやく今朝になって連絡が取れたのだった。


 葵は、朝比奈の呼び出しに浮かれてはいたが、心のどこかで朝比奈の用件を理解しているようですんなりとその呼び出しに応じた。


「お前が海外出張から帰ってくるのを待ちわびてたんだ」


「ほんとに? 可愛いところあるじゃない」


「うるさい」


 カウンターに頬杖をついてにこりと笑う。髪の毛を掻きあげるその仕草も色っぽく妖艶だった。その魔性の魅力で何人もの男を誑かしてきたのかと思うと、よっぽど葵の方が罪な人間に思えてならなかった。
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